あなたと月を見られたら。
さっきまでのウキウキ感が一気に冷えて、カラダもココロも硬直していく。隣にいる龍聖をチラリと見ると「へぇ。」とか「いいな、コレ」とかブツブツ言いながら、楽しそうに本を見ている。
なんだろう。
集中できない。
玲子先生の為にいい本を探したい、その気持ちは変わらないのに…龍聖が気になる。目で彼の動きを追ってるわけじゃないのに、神経が龍聖に傾く。彼の息遣いを彼の何気ない一言を耳が追う。
ダメ。ダメだってば、美月。
この人はダメ。よく分かってるでしょ?龍聖は愛のない男だ、って。オンナを幸せに出来ないタイプの男だ、って。
わかってる。
頭の中ではわかってるのに…本を探す指先がやけに冷たい。息をするのがなんだか苦しくて難しい。
感じたくない。こんな感情、感じたくない。もういやだ。ここから逃げ出したい。
そう思ってるのに…
「なぁ、美月。コレどう思う??」
「…へっ??」
「ウチも夏のスウィーツ考えなきゃって思ってたんだけど…この洋ナシのムースにジュレを添えたら爽やかだし、美味しそうじゃないか??」
彼がふと向ける笑顔にホッとして、どこか嬉しいと感じている自分に気づく。