あなたと月を見られたら。


髪だってサラリーマンしてた時にはあんなに長くなかった。ジーンズだって、履いているのは見たことがない。だから…そのギャップに少し戸惑う。今私の目に映る龍聖はよく知ってる、よく知らない人。


あの頃の龍聖と同じところと、全く違うところを見せつけられるから、頭の中がひどく混乱する。


そんなことを考えながら、お会計を済ませて外に出て

「お待たせ。」

声をかけると

「じゃあ行こっか。俺の家、自由が丘だからそこまで電車でもいい??」

龍聖はそう言って立ち上がると、私の前にスッと手を差し伸べる。


はっ?!
なに、この手!!


怪訝な顔を向けると

「本の貸し代として今日1日俺と恋人ごっこしてよ。」

「はぁっ?!」

「ってことでまずは恋人つなぎからね?」

アイツはそう言って、私の了解もなく私の左手をかすめ取って勝手に指を絡ませる。



「ちょ、ちょっと!!セクハラ禁止!」

焦った私がその手を振りほどこうとしても

「何言ってんの。貴重な本を無償で貸してあげようって言ってんだよ?これぐらいのご褒美、もらってもいいでしょ。」

悪魔はこんな理不尽な要求を突きつけるばかり。

< 37 / 223 >

この作品をシェア

pagetop