あなたと月を見られたら。
ワクワクしながら、ドキドキしながら、アフター7を麻生さんと迎えた私。言われるがままに麻生さんについて行って、連れて行かれた先は自由が丘駅。
ウフフ。きっと自由が丘の素敵なお店に連れて行ってくれるんだろうな〜、なんて相当期待してたのに
「ちょっと。」
「ん??」
「なんでアンタがここにいんのよ!」
「何でって…ここ俺の店だもん。」
連れて行かれたお店は、あろうことか龍聖の経営するカフェ。薄茶の長髪を後ろで一つに結んでギャルソン姿でカウンターに立つ龍聖を見て私はガックリ肩を落とす。
「あははー!ごめんね、牧村さん。なんとなく牧村さんが言ってるのはコイツのことなんじゃないかなー、って思って連れてきちゃった。」
そんな私を見ながら、麻生さんは悪びれもなく朗らかに笑う。
あははー!じゃないわよ!
あははー!じゃ!!
散々私の話を聞いてたんだから、龍聖に私がどんな感情を抱いているのか察しはついてるんでしょ?!なのに、なんで連れてくるのよーー!!!
キィッと麻生さんを睨みつけて
「私、帰ります。」
グルンと踵を返してドアノブに手をかけた瞬間
「待って、待ってよ、牧村さん!」
麻生さんは私の動きを止めに入る。
ええい!離せ!!
優しくていい人だと思ってたのに、悪魔の手先だったなんてっ!!この嘘つきー!!
「イヤです!帰ります!
友達思いでも何でも、私は嘘つく人は嫌いなんです!!」
必死にその制止を振り切ろうと麻生さんと「帰る」「帰らない」の攻防を続けて
「大体、麻生さんには関係ないでしょ?!これは私と龍聖の問題なんだから!」
と啖呵を切ると
「関係あるよ!」
麻生さんは私をまっすぐ見つめてそう言い切る。そしてしばらくお互い無言で睨み合いの攻防をした後
「だって龍聖は…弟なんだから!!」
……へっ??
麻生さんは衝撃の事実を口にする。
「龍聖は俺の双子の弟なんだ!家族の誤解を解きたいって思うのは兄として当然の行為だと思う!!」