あなたと月を見られたら。
いつも優しくて朗らかな麻生さんから飛び出した辛辣な一言。そして人を小馬鹿にしたような冷たい微笑み。確かな悪魔の遺伝子を感じさせるその表情に一瞬身を固まらせていると
「なーんちゃって!驚いた〜??」
ヘヘッと笑って、麻生さんはいつもの天使キャラに早変わり。
な、なんだったの?!今の!
この前も今も、麻生さんって急にキャラが豹変しない?!
わかんない!!
龍聖以上にこの人のことがわからないよ!!
天使と悪魔を極端に行ったり来たりする麻生さんのキャラに目を白黒させていると
「じゃ、龍聖、牧野さん、またね。」
話題の人、麻生優聖さんは天使の笑顔を浮かべながら爽やかに私の隣を通り抜け、ルンルンで店を後にした。
わ、わからない…
あの人のキャラがわからない…!
いい人なの?!それとも腹黒いの?!どっちなのーー?!
一人でモンモンとしながら頭を抱えていると
「優聖は二重人格だから。」
「え??」
「慣れてない人にはいい人ぶるクセに慣れてる人には、本性見せるんだよ。素の優聖は…俺よりはるかに悪い男だよ?」
そう言って龍聖はクスクス笑う。
な、なによ、それ!!!
じゃあ、あの天使で優しい、次の恋人候補No.1の麻生さんは……全部嘘で…腹黒悪魔のアレが素ってこと?!
え?!じゃあ何?!私は天使の皮をかぶった悪魔に性懲りもなく惹かれて、憧れてた、ってことなのー?!
そこまで気づいて私はガックリ肩を落とす。
だ、だめだ。
私は男を見る目がなさすぎる。
二人連続で悪魔を引き当てるなんて、見る目がないにも程がある。