あなたと月を見られたら。
目の前には龍聖の整いすぎた綺麗な顔。彼の服から香るコーヒーの香りに思わずうっとりしてしまう私……って!!ダメじゃん!!ダメじゃん、私!
流されるな!
流されるな、私ーーっ!!
気を取り直して
「あ、ありがと!」
体に絡みついた腕を振り解こうとすると、龍聖は余計に腕の力を強くして更に体を密着させてくる。
ちょ、ちょっと!!
気づけば抱きしめられているような形に持って行かれて、必死に体をジタバタさせていると
「ちょっと充電。」
「…はい??」
「この感じ…久しぶりだから腰にクるね。」
そう言って、龍聖は私を抱きしめたまんまクスクス笑う。
こ、腰にクる??
意味はわからないけれど何だか卑猥なその言葉に、言いようのない何かを感じて思わず赤面。一瞬だけ大人しくなった私の耳元に口を近づけると
「俺、ここ最近、誰も抱いてないから…これだけで欲情できる。」
最低男はやっぱり最低な一言をお見舞いしてきた。
さ、サイテーっ!!
それって言葉を変えれば“今俺は飢えてるからオンナであれば誰でも欲情できる”ってことでしょ??
「相変わらず最低だね、龍聖」
氷点下よりも冷たい視線で睨みつけると
「そう??」
そんなものはどこ吹く風で、飄々とした表情でヤツは答える。
やっぱり変わってないじゃん!
相変わらずだよ、この人!!
愛のない龍聖の態度にイライラしてると
「美月、香水変えてないんだね。」
「…え??」
「香水があの頃と同じだからさ?首すじから香るこの匂いを嗅ぐと……美月を抱いてたあの頃を思い出して欲情するよ。」
彼はこんな悪魔な一言をお見舞いしてきた。