あなたと月を見られたら。
こ、この人、元カノの香水の匂いも覚えてたの?!!
『美月を抱いていたあの頃』
そんな官能的なフレーズを龍聖が口にした瞬間、頭の中が沸騰しそうに熱くなる。
ヤバイ…
私、痴女かもしれない。
甘い甘いあの時間。いつも冷静な龍聖がケモノになるあの瞬間を思い出してキュウンとお腹の奥が痛くなる。
サイアク…
元カレってこういう時、冗談が冗談にできなくなる、って初めて気づいた。
いいな、って思ってるだけの相手なら想像の中だけで、好きって気持ちだけで済ますことができる。だけど、、、元カレとなるとそうはいかない。
だって…さ?知ってるんだもん。
あの時どんな顔をするのか、とか。どんな風に攻めるのか、とか。気持ちよくて恥ずかしい、彼とのセックスの一部始終を知っているから、体が勝手に熱くなる。どうしたって思い出が生々しすぎるんだよ…。
首すじに感じる龍聖の吐息。あの頃と変わらない高い体温。彼がどんなキスをして、どんな風に色っぽい顔をするのか、また知りたくなって。そして彼のくれる、苦しく切ない快感を思い出してしまって『もう、どうにでもして。』だなんて流されてしまいそうになるけれど……
ダメ!!ダメよ、美月!!
しっかりして!
流されちゃダメなのよぅーーーーっ!!
なけなしの理性を総動員して
「エロ禁止!エロ禁止ーっ!
離して、龍聖!」
龍聖の胸板をドンっと押して彼の呪縛から逃れると
「相変わらずガードが固いね、美月」
なぜか満足そうに彼は微笑む。
は、はい??
龍聖の態度に呆気にとられて、お店の入口でポカーンとしながら首をかしげると
「あんまり簡単に落ちちゃう女じゃ、つまんないし、信用できない。美月はその点、簡単に俺なんかに流されてくれないから安心できるよ。」
目の前の悪魔は、またこんな愛のない言葉を吐き出し始める。