あなたと月を見られたら。


「そ、それってどうなの?」

「日系企業はどうなのかは知らないけどね?俺たちの業界ならよくある話なんだよ。上司の権限が強いから上司に嫌われたら、もうアウト。その後、無理やり辞職に追い込まれるっていう図式は俺も良く見てきたから…想定内といえば想定内。俺自身も定年するまであの会社で働く気もなかったし。」


うーーん。
外資系って年収も高いし華やかに見えるけど結構エグくてドロドロしてんだなぁ…。



そんなことを思いながら、人生について思いふけっていると


「でも…一番キツかったのは、辞職に追い込まれたたことじゃなく、ハメられたことでもなく、そうなった時、誰も同僚が助けてくれなかったコトなんだよね。」


そう言って、龍聖はフフッと笑った。


「え…??」


笑っているのに泣いているような、どこか儚げな表情でワインを口に流し込んだ龍聖から視線を外すことができなくて、ただ彼を見つめていると


「俺は友達も地位も名声も金も女も、人が羨むものは全て持っている、って思ってた。だけどさ?地位と名声がなくなった瞬間、友達だと思っていたヤツらが蜘蛛の子を散らすみたいにいなくなった。金がなくなった瞬間、俺に言い寄る女たちはいなくなった。」

「龍聖…」

「バカだろ?そんなところで俺は初めて気づいたんだよ。自分は全て手に入れているようで、実は何にも持ってなかった、ってことに。」


彼は悲しそうに、呆れたように、今にも泣きそうな顔をしてハハッと笑った。


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