月の綺麗な夜に

新しい教室に入ると学校中の人気者の知香の周りにはすぐ人だかりが出来た。


明るく人見知りせず、優しくて、その上学年で一番可愛いとなれば当然だろう。


それに比べて陰気で、冷たくて、不細工な自分には誰も近寄らない。


友達なんて知香ぐらいしかいない。


笑顔に囲まれる知香を見ているのはなんだか心苦しくて、一人、窓際の自分の席へと急いだ。


教室の中は全く知らない人ばかりで溢れていて、なんとなく狭く感じる。


圧迫感から開放されようと、窓の外を見つめてみた。


今日は雲ひとつない憎たらしいくらいに良い天気だから、水色が空一面に広がっている。


どこまでも広がる水色が自由を全て握っていると感じた。


それに対してこんな狭い所に押し込まれている自分はなんなのだろう。


窓を開ければ、もしかしたら自分も自由を感じる事が出来るかもしれない。


そんな想いも虚しく、窓を開けても暑苦しい風が流れて来ただけだった。
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