月の綺麗な夜に
「なんですか?」
「いや、まぁな。明日は実力テストだろう。学年一位のお前には頑張って欲しいんだ。お前の志望校のK大の学校推薦もかかっているしな――、」
「――、それで、勉強ははかどってるか?」と、ニヤつきながら全身を舐めまわす様に見て問いかけてくる。
この男は二年のときも担任だったが、常にニヤついていて生理的に受け付けることが出来なかった。
内容も内容で嫌悪感が私の体に貼りついてくるみたいだ。
日々母に勉強ばかりを強制されている私が、はかどっていないわけがないだろう。
「別に。先生の迷惑にならないくらいには頑張っていますよ。話はそれだけですか?それだけなら――、」
担任の目を無機質に見つめながら、淡々と言葉を並べる。
一瞬だけ不快なニヤつきはとまったが、すぐに元通りになった。
「――、失礼します」
不快さが空さえも突き抜けるぐらいにたまった私は、ほとんど人がいなくなった教室をすぐに知香と飛び出した。