不要なモノは愛
「小夏。こっち」


「あ…ごめんなさい…」


上を見上げていたから、横を人が通っていくのに気付かなかった。松野兄がぶつかりそうになっていた私の肩を抱き、自分のほうに引き寄せる。

端に寄ったから、もうぶつかる心配はないと思うけど、抱かれた肩は離されなくて、悠々と泳ぐイルカに目で追うと嫌でも松野兄の顔が視界に入る。

それも、当たり前だけど、イルカよりも近いほど間近だった。イルカのかわいい顔には癒されるけど、松野兄の整った顔は心臓を疲れさせる。早い鼓動を抑えなくては…と思うけど、全然静まりそうにない。


「こいつら、かわいい顔しているな。俺、イルカが好きなんだよ。ずっと見ていても飽きない」


「え?」


「なんだよ、その間抜けな顔。イルカに負けずとかわいい顔しているぞ」


「え…あ…」


イルカをかわいいと言うのも、好きだと言うのも、意外で緩んだ顔でイルカを見る姿に呆けてしまった。
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