欲しがりなくちびる
数日前に他のスタッフと昼休憩で一緒になったとき、実加の今カレが最近CMでよく見掛ける若手俳優に似ているという話を聞いた朔は、彼女がすぐに話に飛び付いてくるかと思いきや浮足立つ様子はなくダルそうに唇を開く。

「だって、もうすぐクリスマスだから、今から男作っとかないと間に合わないじゃないですかー」

クリスマス、それは世の恋人達が一年で一番盛り上がる時期だが、朔は、そうか、今年ももうそんな季節かと心の中で小さく溜息を吐く。歳を重ねるごとに一年が段々短くなってきているように感じるのは自分だけだろうか。

「何それ? クリスマス用の男ってこと?」

来客ないことをいいことに、二人は作業を続けながら口も動かし続けている。朔からの問いかけに、実加は持っていたボールペンのノックする部分で顎をとんとんと二回叩くと小さく呻る。

「うーん。まぁ、そんなとこですかね。でもそれ目当てで付き合う男とは、もってバレンタインデーまでですけど」

「そうなんだ?」

「そうですよー。向こうだって、とりあえずクリスマス用に彼女でもってくらいにしか思ってないんだから。その後やってくる新年のカウントダウンを一緒に過ごしてちょっと馴染んできたかなーって思えてきた頃にバレンタインデーがやってきて、彼が会社の同僚からチョコなんか貰ってきたりすると、あっさりその女に持っていかれるパターンってありがちじゃないですか?」

朔にはイベント用に男を作ったことがなかったから実加の見解は目から鱗で、普段から軽いノリの彼女も色々考えながら頑張って恋愛してきたのだと感慨深く相槌を打つ。

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