欲しがりなくちびる
最寄駅からマンションまでの徒歩7分ほどの間には昔ながらの商店街があり、その一角にカフェバーがある。午後7時を過ぎるとアルコールを出すお店で、職場近くのカフェに立ち寄らない時はそこで一息入れてから帰ることにしていた。
朔は、今日はどこにも寄らず帰路へと向かっていたが、そこに特に理由はなかった。
マンションの正面にある大きな公園を通り抜けるのが近道で、園内の電灯の一つが切れていて暗かったから、それは余計にはっきりと見えたのかもしれない。浩輔が借りているマンションは二階がロビーになっていて、そこへと通じる外階段は夜になると足元を照らすオレンジ色の照明で幻想的な雰囲気を醸し出している。
公園の出口まで残り三分の一程度のところまでやってきた朔は、マンションの前に立つ二人の人影を見つけて、そのうちの一人は浩輔だとすぐに分かった。
そして、彼に向かい合っている見ず知らずの女は、まるで朔が二人を見つけるタイミングを見計らったかのように浩輔の首の後ろに腕を回して唇を重ねた。
視線が釘付けになる。見たくないのに、眼を背けることもできない。
それはほんの数秒のようにも途轍もなく長い時間のようにも感じられて、その間、浩輔は彼女を拒むことをしなかった。
朔は、今日はどこにも寄らず帰路へと向かっていたが、そこに特に理由はなかった。
マンションの正面にある大きな公園を通り抜けるのが近道で、園内の電灯の一つが切れていて暗かったから、それは余計にはっきりと見えたのかもしれない。浩輔が借りているマンションは二階がロビーになっていて、そこへと通じる外階段は夜になると足元を照らすオレンジ色の照明で幻想的な雰囲気を醸し出している。
公園の出口まで残り三分の一程度のところまでやってきた朔は、マンションの前に立つ二人の人影を見つけて、そのうちの一人は浩輔だとすぐに分かった。
そして、彼に向かい合っている見ず知らずの女は、まるで朔が二人を見つけるタイミングを見計らったかのように浩輔の首の後ろに腕を回して唇を重ねた。
視線が釘付けになる。見たくないのに、眼を背けることもできない。
それはほんの数秒のようにも途轍もなく長い時間のようにも感じられて、その間、浩輔は彼女を拒むことをしなかった。