欲しがりなくちびる
相馬は馴染みの店だという小料理店に朔を連れて行き、酒を交えつつ他愛もない話に花を咲かせた。
いつもは娘さんが食事の支度をしているそうだが今日は彼女がデートでいない為、一人で食事をするのも侘しいと誘ってくれたのだと言う。
相馬は朔の父親と同年代であったが、やはり父親と他人とでは違うのか、人生の先輩でもある彼の話であれば煙たがらずに聞くこともできた。顔を合わせれば口癖のように、早く結婚しろとばかり言う父親は一世代前の古い体質の男と似た部分を持っていたが、相馬は逆に前衛的で、もっと女性の持つ感性を大切にしてどんどん社会に進出していくべきだと言う。朔はそれに賛成した。
話題は絵画の話へと流れ、彼は分かりやすく流派の説明をしてくれた。
朔は不意に、日本を代表する画家である相馬と知り合ったのも何かの縁だからと、浩輔の話をしてみようかと思った。彼が知ったら嫌がるかもしれないけれど、凄い賞を取ったことがあるというし、絵画への情熱だって本当は今も隠し持っている。だからどうにかできないものなのだろうかと、彼と暮らすようになってからずっと考えていた。
「実は、私の幼馴染で絵を描いている人がいて、彼は学生時代になんだか凄い賞を取ったらしいんですけど、絵で腹はいっぱいにならないだろうって、今はサラリーマンをしてるんです。大学時代の教授に頼まれたからと、休みの日に絵画教室で教えたりもしているから、本当は今でも絵が好きなんだと思います。私は昔からその人が描く絵が好きだったし、もし本当に才能があるのならそっちの世界で生きてほしいと思ったりもします。……でも、きっと難しい世界なんでしょうね」
いつもは娘さんが食事の支度をしているそうだが今日は彼女がデートでいない為、一人で食事をするのも侘しいと誘ってくれたのだと言う。
相馬は朔の父親と同年代であったが、やはり父親と他人とでは違うのか、人生の先輩でもある彼の話であれば煙たがらずに聞くこともできた。顔を合わせれば口癖のように、早く結婚しろとばかり言う父親は一世代前の古い体質の男と似た部分を持っていたが、相馬は逆に前衛的で、もっと女性の持つ感性を大切にしてどんどん社会に進出していくべきだと言う。朔はそれに賛成した。
話題は絵画の話へと流れ、彼は分かりやすく流派の説明をしてくれた。
朔は不意に、日本を代表する画家である相馬と知り合ったのも何かの縁だからと、浩輔の話をしてみようかと思った。彼が知ったら嫌がるかもしれないけれど、凄い賞を取ったことがあるというし、絵画への情熱だって本当は今も隠し持っている。だからどうにかできないものなのだろうかと、彼と暮らすようになってからずっと考えていた。
「実は、私の幼馴染で絵を描いている人がいて、彼は学生時代になんだか凄い賞を取ったらしいんですけど、絵で腹はいっぱいにならないだろうって、今はサラリーマンをしてるんです。大学時代の教授に頼まれたからと、休みの日に絵画教室で教えたりもしているから、本当は今でも絵が好きなんだと思います。私は昔からその人が描く絵が好きだったし、もし本当に才能があるのならそっちの世界で生きてほしいと思ったりもします。……でも、きっと難しい世界なんでしょうね」