欲しがりなくちびる
「朔、飯食ってきた?」
結子のペースに押され気味でいる朔を気遣うように、浩輔がメニュー表を広げる。
「うん。帰りに食べてきた。……じゃあ、私はこれで先に帰るね」
強引に連れてこられたとはいえ、割り込む形になったのは申し訳ない気分になってきてバッグへと手を伸ばした朔より一瞬早く、結子の方が立ち上った。
「ああ! いいんです。明日も仕事だからそろそろ帰ろうと思っていたところだったんですよ。それじゃあ、おやすみなさい」
結子はそう言って朔を留まらせると、財布から二千円を取り出してテーブルに置く。可愛らしい形をした唇をきゅっと持ち上げて笑うと二人に手を振って店を後にする。
「きれいな人だね」
残された二人は、結子がいなくなったテーブルでどちらともなく話し出す。
「ああ。祖父がスウェーデン人で、母親がフランス人なんだと」
「へぇ。なんかすごいね。でも、だからなんだ。透き通るような肌してたもんね。ちょっと面白い子だったけど、ああいう人、嫌いじゃないな」
朔がそう思ったのは本当だった。恋敵だと思えば素直に相手を褒めることなど難しいものだが、彼女が纏っている空気感は心地良いもので、すんなりと受け入れることができた。
結子のペースに押され気味でいる朔を気遣うように、浩輔がメニュー表を広げる。
「うん。帰りに食べてきた。……じゃあ、私はこれで先に帰るね」
強引に連れてこられたとはいえ、割り込む形になったのは申し訳ない気分になってきてバッグへと手を伸ばした朔より一瞬早く、結子の方が立ち上った。
「ああ! いいんです。明日も仕事だからそろそろ帰ろうと思っていたところだったんですよ。それじゃあ、おやすみなさい」
結子はそう言って朔を留まらせると、財布から二千円を取り出してテーブルに置く。可愛らしい形をした唇をきゅっと持ち上げて笑うと二人に手を振って店を後にする。
「きれいな人だね」
残された二人は、結子がいなくなったテーブルでどちらともなく話し出す。
「ああ。祖父がスウェーデン人で、母親がフランス人なんだと」
「へぇ。なんかすごいね。でも、だからなんだ。透き通るような肌してたもんね。ちょっと面白い子だったけど、ああいう人、嫌いじゃないな」
朔がそう思ったのは本当だった。恋敵だと思えば素直に相手を褒めることなど難しいものだが、彼女が纏っている空気感は心地良いもので、すんなりと受け入れることができた。