欲しがりなくちびる
「ああ、俺も。片庭は知らないだろうけど、俺が最初に通っていた高校の二つ隣のクラスだったんだ。本当の地毛は透き通るようなブロンドで、あの頃は腰まで髪を伸ばしていて、今よりもっと外人寄りの顔してたんだよ。近隣の高校からも見物に来る奴らがいるほどの美少女なのに本人は全然それに気付いてなくて、いつも寝ぐせがついたまま登校してきて平気でいるような奴だったんだ」

浩輔は可笑しそうに言うと、彼女の後姿を見送りながらジンライムが入ったグラスを傾ける。彼が誰か一人の人間についてここまで話すのを初めて聞いたような気がした。

ふと朔の脳裏には『白い羽の少女』が過ぎり、懐疑的になってしまう前に振り切った。

「朔、最近帰り遅いけど、もしかしてここ寄ってきてんの?」

「いつもってわけじゃないけど、お酒だけじゃなくて本格的なコーヒーも飲めるからね」

浩輔はジンライムのおかわり、朔はアマレットミルクを注文して、それぞれが飲み終えたところで店を出た。冬の冷たい空気が、アルコールで温まった頬をひんやりと撫でる。

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