欲しがりなくちびる
クリスマスが終われば、あっという間に新年を迎える。毎年のことながら、セール時の疲労困憊は半端ない。特に、冬のセールは初売りや福袋もあるため、規制を掛けても入り乱れる客の姿には、もう口をあんぐりするしかない。定員オーバーの店内は熱気が凄く、怒涛のように毎日が過ぎていく。

生気を全て吸い取られてしまうんじゃないかというくらいの凄まじいパワーに気圧されて、この時期の帰宅時はまさに屍のような様相だ。

「朔、今日も大分やつれてるな」

朔は帰宅すると、とりあえず手洗いとうがいだけは済ませてリビングのソファを陣取る。本当は今にもベッドに倒れ込みたい衝動に駆られているが、そのまま眠ってしまうのが分かっているからそうもいかない。

メイクだって落さないといけないし、本当はげっそりした姿を浩輔には見せたくないけれど、うっかり一度晒してしまってからはそんな事に拘っている小さな自分が嫌になって、今ではあまり恥じらう事なくグダグダなままリビングに居座っている。

「ビール飲むか?」

徐に立ち上った浩輔は、キッチンへ向かいながら声を掛けてくる。

「ううん。体が冷えるから焼酎のお湯割りがいい」

まるで自分の部屋にいるかのように寛いではいるが、決してここが浩輔のマンションだということを忘れているわけではない。けれども、どういうわけか浩輔が優しくしてくれるので甘えてしまっている。

明日はシフト休みだから、今夜は久し振りにゆっくり過ごしたい。それから、できれば浩輔に触れられたい。セールが始まってからは、浩輔と一度もしていなかった。疲れ過ぎてそれどころじゃなかった確かだが、彼のダブルベッドで一緒に眠るだけで、触れ合ったりはしていない。

それも無理はないと朔は思う。こんなに草臥れた女を抱こうなんて気になる男の方がおかしなものだ。

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