欲しがりなくちびる
久し振りのキャンパスに、ふと学生時代を思い出す。
卒業して早5年。今では社会人生活を当然のように送っているけれど、あの頃はまだ近い先の将来さえ考えることもなかった。恋愛に明け暮れて、騙して騙されて、そんなことを毎日繰り返していた日々が懐かしい。
だからなのか、生徒達が課題の作品に創作意欲を燃やす様子を教室の隙間から垣間見ると、自分は何か大切な事をやり残しているのではないかと、あの頃の自分に問い質してみたくなる。
「朔さん、こっちですよ」
結子に手招きされ、彼女の隣に並ぶ。
目の前には、圧倒的なまでの存在感を放つ油絵。浩輔が賞を取ったという「見つめる少女」がそこにはあった。
「ここには、大嶋君みたいに在学中に賞を取った人や有名になったOBが寄贈した作品が展示されてるんです」
結子は言いながら、懐かしそうに浩輔の絵を見つめる。
「私と大嶋君、ずっと友達だったんですけど、ちょっとだけ付き合ってた時期があるんです。その時に彼が描いていたのがこの絵で……。本当、懐かしいな」
彼女は目を細めると、今度は困ったように微笑む。
「でも恋人になったら急に上手くいかなくなって、すぐに別れたんですけどね。友達でいた頃は、お互いの個性も才能も尊敬できたのに、ちょっと近付いた途端、お互いのスタイルの違いから口論するようになって、譲れないものが多すぎて駄目になっちゃったんです。きっと若かったからなんでしょうね」
卒業して早5年。今では社会人生活を当然のように送っているけれど、あの頃はまだ近い先の将来さえ考えることもなかった。恋愛に明け暮れて、騙して騙されて、そんなことを毎日繰り返していた日々が懐かしい。
だからなのか、生徒達が課題の作品に創作意欲を燃やす様子を教室の隙間から垣間見ると、自分は何か大切な事をやり残しているのではないかと、あの頃の自分に問い質してみたくなる。
「朔さん、こっちですよ」
結子に手招きされ、彼女の隣に並ぶ。
目の前には、圧倒的なまでの存在感を放つ油絵。浩輔が賞を取ったという「見つめる少女」がそこにはあった。
「ここには、大嶋君みたいに在学中に賞を取った人や有名になったOBが寄贈した作品が展示されてるんです」
結子は言いながら、懐かしそうに浩輔の絵を見つめる。
「私と大嶋君、ずっと友達だったんですけど、ちょっとだけ付き合ってた時期があるんです。その時に彼が描いていたのがこの絵で……。本当、懐かしいな」
彼女は目を細めると、今度は困ったように微笑む。
「でも恋人になったら急に上手くいかなくなって、すぐに別れたんですけどね。友達でいた頃は、お互いの個性も才能も尊敬できたのに、ちょっと近付いた途端、お互いのスタイルの違いから口論するようになって、譲れないものが多すぎて駄目になっちゃったんです。きっと若かったからなんでしょうね」