欲しがりなくちびる
「このドレッシング旨いな。何入ってんの?」

浩輔が海老を齧りながら聞いてくる。

「んー? ちょっと隠し味が入ってるんだ。お塩と黒胡椒とレモン汁と……、あとは内緒」

少し嬉しくなって、朔がふふと笑って誤魔化せば、浩輔は何故か可笑しそうに吐息を洩らす。

「朔。おまえ、なに得意気になってんの?」

意地悪そうな視線を寄こし笑いを堪えるように唇を震わせる様子に、さっきまでの弾んだ気持ちはすっかり朔のなかから消え失せていく。

「別にそんなんじゃないしっ」

あからさまにぷいと前へと向き直ってピラフを口に運べば、浩輔が目の前に手を伸ばしてきて、朔の口端にそっと触れる。

「ついてる」

そして、米粒を薄く開いた彼女の口の中に押し込むと、自分はその指をぺろりと舐めた。

「からかったんじゃない。可愛いなって思っただけだ」 

そう言って、優しく目を細める浩輔に、一気に体温が上昇していくのが分かった。

珍しいことを言うものだから、すぐにでも赤くなった顔を隠したいのに、思わず彼の顔を覗き込んでしまった。


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