欲しがりなくちびる
「どうした?」

浩輔は、自分が何を言ったか分かっていないのか何食わぬ顔で海老を突いているから、朔はおかしな反応をしているのは自分の方なのだろうかと首を捻る。

「ううん。なんでもない」

尻すぼみ気味に言って、スプーンを持ち直す。

ちらりと横目で窺ってみたけれど、浩輔は特に気にも止めることなく、フォークを運んでいた。

こういうことがあるから、勘違いしそうになってしまうのだ。

もしかすると、浩輔は思っている以上に女慣れしているのかもしれない。

整った精悍な顔付きとモデル並みの長身は女受けが良さそうだし、仕事だってできる。

今現在恋人はいなくても、身体だけの大人の関係を持っている女子は朔以外にもいるのかもしれない。

いまさらではあるが 業界大手の一流企業に勤めていて尚且つルックスもいい男を、女がそう易々と放っておくはずはない。

そう考えると、浩輔に対する気持ちはますます分からなくなってきて、小さく萎んでいってしまいそうになる。

一体自分はどうしたいのだろう。浩輔に何を望んでいるのだろうか。

彼のその形のよい唇で言葉にしてくれないと、今の朔は自分の気持ちさえ理解できない。

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