欲しがりなくちびる
「ねぇ、浩輔」

「んー?」

食事を済ませた二人は、ソファでテレビを観ていた。

浩輔は膝の上に広げた経済誌に視線を走らせながら、バラエティ番組にもしっかり耳を傾けていて、時折雑誌を見ながら笑うという複雑なことをしている。

朔は結子のことを聞こうと思ったが、いい加減しつこいと呆れられそうで、何でもないとすぐに口を噤む。

浩輔はそんな朔を気に留める事もなく、

「そ? じゃあ、思い出したら言えよ」

なんて、しっかりとした返事を返してくる。

朔は子供の頃からひとつのことに集中したらそれ以外が疎かになってしまうバランスに欠けた人間だったが、浩輔は違った。

朔が思うに、彼はきっと何事に対しても平等に気を配ることができる人なのだろう。

想いも愛も感情も、博愛主義者のように、誰に対してでも分け隔てなく、優しく接することができる。

朔のこともそういった延長線上で、幼馴染とか姉弟だとか、赤の他人よりは少しだけ近い位置に存在しているという理由だけで、こうして隣にいるのかもしれない。

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