欲しがりなくちびる
まだ浩輔の側にいたいのだと、朔の心の中に住んでいる聞き分けのない小さな子供がどんなに泣き喚いても、現実問題としての猶予は残りわずかだ。

浩輔がいないのに彼のベッドで眠るのは悪いような気がして、けれども自分のベッドで一人で寝るのは寂しくて、彼が帰ってくるまで起きていようと思った。

間取り図を見るのに飽きたらファッションサイトへとアクセスしたりしながら、時間が過ぎるのを待っていた。

朔が最後に時計を見たときは、午前1時を過ぎていた。

「……さく、朔。ここで寝ると風邪ひく」

浩輔の声が聞こえた気がして重たい瞼を開けようとしても、瞼はぴくりとも動かない。

「んー。起きれない……」

夢現に言うとふわりと身体が浮いて、少しすると背中にスプリングの軋みを感じる。

浩輔がベッドに運んでくれたらしい。

それでも瞼は堅く閉じたままで、ぱたんとドアが閉まる音を機に朔の意識は再び沈んでいく。

そこからどのくらいの時間が過ぎたのか、寝返りを打って腕を伸ばした先のシーツはまだ冷たいままで、ふと意識が覚醒してくる。瞼を開けて確認するとやはり浩輔はベッドにいなかった。

朔はストールを羽織り、リビングへと続く扉を開く。

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