欲しがりなくちびる
「冷蔵庫はここでいいですかー?」
さっそく届いたばかりの荷物を片付けている朔に、引っ越し業者の学生アルバイトが声を掛けてくる。彼女は、リビングからカウンター越しにキッチンを覗いて指を差した。
「あー、それ奥の角に合わせちゃってください」
指示した先にあるのは新製品の3ドア冷蔵庫でかなりの高額だったが、暢と電化製品を見に行った際に朔がどうしてもと言って購入したものだ。
彼女は、仕事を定時に上がり足早にマンションへ向かうと、暢はやはり飲み会に行ったのか、いつもなら帰宅している時間帯だというのにその姿はなかった。
その隙にと、まるで夜逃げのように運び出したのは、冷蔵庫の他に洗濯乾燥機、電子レンジに炊飯器、その他キッチン用品。あとは洋服や靴といった身の回りの物だ。テレビにソファ、そして、二度と見たくもない例のベッドは言わずもがな置いてきた。
どれも暢と半分ずつ出し合って購入した物ばかりだが、とりあえずは浩輔の部屋に足りない物を選んできた。
今思えば、不幸中の幸いとでも言うのだろうか、同棲を始めた時にマンションや光熱費の名義を変えておいて良かったと朔は思った。彼女は、男女関係なく働ける人が働けばいいと思っているタイプの為そういったことにも拘らない方だけれど、一緒に暮らすに当たり、暢がこれだけはと言って一番にしたことがそれだった。
電化製品が無くなったところで、浩輔だって半年間不自由なく暮らしてきたのだから、暢にだってできるだろう。
昨日の今日でまだこれからのことを考える余裕はなかったが、今はただ暢と距離を置きたかった。
さっそく届いたばかりの荷物を片付けている朔に、引っ越し業者の学生アルバイトが声を掛けてくる。彼女は、リビングからカウンター越しにキッチンを覗いて指を差した。
「あー、それ奥の角に合わせちゃってください」
指示した先にあるのは新製品の3ドア冷蔵庫でかなりの高額だったが、暢と電化製品を見に行った際に朔がどうしてもと言って購入したものだ。
彼女は、仕事を定時に上がり足早にマンションへ向かうと、暢はやはり飲み会に行ったのか、いつもなら帰宅している時間帯だというのにその姿はなかった。
その隙にと、まるで夜逃げのように運び出したのは、冷蔵庫の他に洗濯乾燥機、電子レンジに炊飯器、その他キッチン用品。あとは洋服や靴といった身の回りの物だ。テレビにソファ、そして、二度と見たくもない例のベッドは言わずもがな置いてきた。
どれも暢と半分ずつ出し合って購入した物ばかりだが、とりあえずは浩輔の部屋に足りない物を選んできた。
今思えば、不幸中の幸いとでも言うのだろうか、同棲を始めた時にマンションや光熱費の名義を変えておいて良かったと朔は思った。彼女は、男女関係なく働ける人が働けばいいと思っているタイプの為そういったことにも拘らない方だけれど、一緒に暮らすに当たり、暢がこれだけはと言って一番にしたことがそれだった。
電化製品が無くなったところで、浩輔だって半年間不自由なく暮らしてきたのだから、暢にだってできるだろう。
昨日の今日でまだこれからのことを考える余裕はなかったが、今はただ暢と距離を置きたかった。