欲しがりなくちびる
「うわっ?」
あらかた片付けが終わったところで、浩輔が帰ってきたらしい。
恐らく、玄関にある靴の多さに悲鳴を上げたのだろう。そういえば、シュークローゼットに入り切らなかった分は出したままにしてあったことに朔は気付く。
「朔っ?!」
出迎えにいこうと腰を上げる前に、浩輔が慌てた様子でどたどたと足音を立ててリビングに駆けてきた。
彼は、出勤前とは明らかに違う室内の現状に目を見張ると、その数瞬後、全てを悟ったかのように大きな溜息を吐いた。
「嫁入り道具、持ってきちゃった」
浩輔の様子を窺いつつ、朔は柄にもなく「エヘっ」と可愛らしく小首を傾げてみせたが、彼は無言のまま右の眉を押し上げるだけだった。
「まさか……」
じろりと疑惑の眼を向けられたと同時に、朔は待ち構えていたとばかりに勢いよく胸の前で両方の手のひらをぱちん、と合わせる。
「お願いっ! ちょっとの間でいいから、ここに置いてくれないっ?」
念を送るようにぎゅっと閉じた瞼を恐る恐る開いて祈るような気持ちで浩輔を見ると、今度は小さな溜息を吐いた彼は諦めたように口を開く。
あらかた片付けが終わったところで、浩輔が帰ってきたらしい。
恐らく、玄関にある靴の多さに悲鳴を上げたのだろう。そういえば、シュークローゼットに入り切らなかった分は出したままにしてあったことに朔は気付く。
「朔っ?!」
出迎えにいこうと腰を上げる前に、浩輔が慌てた様子でどたどたと足音を立ててリビングに駆けてきた。
彼は、出勤前とは明らかに違う室内の現状に目を見張ると、その数瞬後、全てを悟ったかのように大きな溜息を吐いた。
「嫁入り道具、持ってきちゃった」
浩輔の様子を窺いつつ、朔は柄にもなく「エヘっ」と可愛らしく小首を傾げてみせたが、彼は無言のまま右の眉を押し上げるだけだった。
「まさか……」
じろりと疑惑の眼を向けられたと同時に、朔は待ち構えていたとばかりに勢いよく胸の前で両方の手のひらをぱちん、と合わせる。
「お願いっ! ちょっとの間でいいから、ここに置いてくれないっ?」
念を送るようにぎゅっと閉じた瞼を恐る恐る開いて祈るような気持ちで浩輔を見ると、今度は小さな溜息を吐いた彼は諦めたように口を開く。