欲しがりなくちびる
「……ちょっとって、どのくらい?」

浩輔は、昔から朔以外の人間に対してどこか排他的で孤独を愛するところがある。例え家族といえども傍に人を置きたがるだろうかと考えると確信がなかった。その為、ひとことひとこと、浩輔の顔色と声色を確認しながら妥当な線を探る。

「え……っと、1ヵ月とか2ヶ月とか? ううん! 来週かもしれないしっ、半年かも、しれないけど……。とにかくお願いっ! 行くとこないの!」

必死の形相で二度目のぱちんを胸のまえで響かせる。すると、浩輔がちらりと覗き込むように視線を上げる。 

「それで……? 彼氏とは別れるのかよ?」

浩輔は言うと、何かを考えるふうに顎に手を当てる。そして眉を人差し指で弾くようにして掻くと、再び朔へと視線を遣る。それに訳もなくどきりとして、彼女は思わず目を逸らしてしまう。

「それは、まだ……」

決められない気持ちそのままにぼそりと呟けば、浩輔は「分かった」とひとつ頷いた。

「朔の好きにしろよ。俺も家電買う手間省けたし、正直コインランドリー行くの面倒だったんだよな。でもおまえ、どこで寝んの? ご覧の通り寝室は1つしかないし、ベッドもう1つ入れられるほどスペース余ってないけど」

あれこれ言いながらも浩輔なら最終的に受け入れてくれるのではと推測していたものの、いざとなるとそこまでは考えておらず、朔は慌てて口を開く。


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