欲しがりなくちびる
「朔は相変わらず、酒強いな」

ごくごくと中ジョッキを空けていく彼女に、浩輔は驚くことも呆れることもせずに言う。

「浩輔だって、私のペースに負けてないし」

差し向いの席で、まるで水か何かのように戸惑いもなく喉の奥に流し込まれていく黄金色の液体は、浩輔のジョッキからあっという間になくなる。

二人の間に血の繋がりはないのに、まるで本物の兄弟よりもそれらしいところを共有している事に気が付いたのはいつの頃だっただろうか。例えば、アルコールに強い体質もそうだけれど、好きな食べ物や、聴く音楽、インスピレーションを受けるものまで、そういったフィーリング的要素の部分までもが子供の頃から似通っていた。

「ねぇ。浩輔ってさ、今も絵描いたりしてるの?」

朔はふいに思い出して、そういえば、と尋ねる。

「たまにね。社会人になってからはあんまり時間とれないけど」

浩輔は言いながら、軟骨のから揚げを箸で摘んだ。

「でも、週末に絵画教室で子供に教えたりしてるんでしょ?」

「それもおふくろに聞いたのか? 第2、第4土曜だけだけど、大学で世話になった教授から話が回ってきたんだよ」

朔は、視界の片隅に、ちょうど隣の席に運ばれてきた料理が目に留まって、あれはなんだろうとメニューに手を延ばす。浩輔の話を聞きながらメニュー表に視線を走らせ、写真入りのタイトルを見つけたところで、次に頼もうと思いながらメニュー立てに戻す。

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