欲しがりなくちびる
「そうなんだ。結構、向いてそうだよね。浩輔って普段無愛想だけど、子供には人気あるんじゃない? 昔から子供の前だと、猫とか犬とか、小動物見ている時みたいに優しい顔するもんね」

「そうか?」

「そうだよ。私には一度だって見せたことがないくらいの、とびきりの笑顔見せてるじゃん。自分で気付いてなかったの?」

ちらりと浩輔へ目線を遣りながら、再びジョッキを傾ける。

「まぁ、俺って元が優しいから」

「ははっ。それ本気で言ってる?」

あまりにさらりと言って退けた浩輔に渇いた笑いを向ければ、すかさず、一瞥が返ってきた。

「そうだろーよ? 傷心のおまえ、引き取ってやるくらいだからな」

浩輔は意地悪そうに含み笑いをすると、左の口端をきゅっと上げて朔を見る。そのまま手をふわっと上げて朔の方へと差し伸べようとする仕草に、朔は思わず、昨夜慰めてきたときのようにまた頭をぽんぽんされるのかと身構えると、

「じっとしてろ。睫毛、落ちてる」

浩輔は、手の甲で彼女の下瞼を拭った。

< 28 / 172 >

この作品をシェア

pagetop