欲しがりなくちびる
「悪いな。手伝わせて」

作業台を拭いたぞうきんを洗っていると、浩輔が後ろから声をかけてくる。

「いいよ。なんだか楽しかったし、浩輔が絵を描いている姿も久しぶりに見た」

「アニメのキャラクターだけどな。あれやると、手っ取り早く子供にうけんだよ」

「おかげで、私は最後までミキちゃんに睨まれっぱなしだったけど?」

「あぁ。小さくても女なんだよな。俺、昔から男には人気あったんだけど、体質変わったかな」

「何言ってんの。浩輔は昔から女の子にモテてたよ。鈍いから気が付かなかっただけで」

後片付けを終えて横に並んで手を洗い始めた浩輔に振り返り、突っ込みを入れる。

「嘘。マジで?」

「マジで」

「そりゃ、残念なことした」

相槌を打ちながら私も浩輔を覗き込めば、彼は言葉とは裏腹に、あまり残念でもなさそうな口振りで首を竦めた。でも、それが返って浩輔らしいと思った。

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