欲しがりなくちびる
浩輔が借りているマンションは築年数が浅いデザイナーズ物件で、特に水回りにその特徴が現れている。重厚感のある大理石調の洗面台は二人並んで使えるほどのスペースが取ってあり、その左右には分厚いガラスで仕切られたトイレと浴室があった。

朔は鏡越しに浩輔の行動を確認して左に避けたのに、彼は洗面台には向かわず朔の後ろに立った。そして伸ばした腕でそっと大切なものを扱うように彼女を抱き締める。

「……浩輔?」

彼は呼び掛けに応えることはなく朔の頬に手を添えて後ろに向かせると、彼女の唇を覆うようにして唇を重ねる。抱き締める腕は熱を帯びているのに唇はひんやりしていて、朔は思わずびくりと肩が揺らす。

唇を割って入ってきた舌はじっとりと重みを残して動き、絡めると浩輔の舌に残るワインの苦味が口の中に広がる。

朔のキャミソールの上から胸を撫でていた浩輔の手のひらが直に素肌に触れると、彼女は思わずあっと小さな悲鳴を上げて閉じていた瞼を開く。

鏡に映る朔は顔を赤らめ、視線は漂っている。

だらしなく肩紐が落ちたキャミソールから覗くようにして、普段は丸みを帯びた胸が浩輔の手のひらの形に歪められていた。

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