欲しがりなくちびる
「おまえ夕飯は……って、朔っ?」

ドアを開けた浩輔は、ぺたりとお尻を床に付いてかたかたと震える彼女を見つけると、すぐさま駆け寄ってくる。

「いやっ! 見ないでっ!」

無理に視線を合わせようとする浩輔に大きく頭を振って、掌で顔を覆い隠す。胸も、太腿も、全てを浩輔の視線から隠したかった。

「見ないでって……。おまえ、何があった? 何があったって聞いてんだよっ!!」

問いただすように朔の肩を掴んで揺さぶる浩輔は、一瞬びくりと腕を痙攣させる。浩輔は全て悟ったのだろう。恐る恐る朔の顔を覗き込むと、今度はそっと壊れものを扱うような優しさで抱き締めてくる。

あんなに欲しかった浩輔の温かい腕の中は、酷い罪悪感で胸をひりつかせる。

こんなはずじゃ、なかった。

自己嫌悪や後悔なのかも分からない。ただただ涙が出そうになるのを朔は必死に堪えていた。

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