欲しがりなくちびる
暢と別れてから、毎日のように浩輔と身体を重ねるようになっていた。抱き合った後は当たり前のように一緒に眠る。浩輔はその度にまるで朔を抱き枕か何かみたいに抱き締めて眠りに就く。

考えてみれば、誰に気兼ねすることなくこんなに長い時間二人で一緒にいるのは初めてのことだったし、お互いに恋人がいない同士で抱き合うのは中学生のとき以来だ。その時も、二人の関係を位置づける呼び名はなかった。

浩輔は相変わらず何を考えているのか分かりづらい男で、おまけに表情が乏しいせいで、朔には全くといっていいほど彼の内面は理解できない。

二人でいるときは、まるで余所行きの顔みたいにすましているか、考え事をしているみたいに遠い眼をすることがほとんどだというのに、営業成績を上げているというのだから興味深い。

抱き合うときは朔が恥ずかしくなるほど見つめてくるのに、普段は無愛想だから、たまに見せる笑顔や真っすぐに見つめる真摯な視線に、訳もなくどきりとさせられてしまう。

その度に、朔の胸は息ができないほど締め付けられているということを浩輔が知るはずもない。

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