【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく


翌日、また翌日と彼は現れ。

もう一月も経った頃でしょうか。

冬にしてはのどかな日差しが部屋に差し込む頃。


『扇莉、扇莉!』


『だから、声をかけてから部屋に入れと…!』


やけに興奮した様子で入ってきた霧氷様。

私のところに何を伝えに来て下さったのだろうと、書き物机から顔を上げ、彼の方に向き直る。


『どうした?』


『私は、花姫に惚れた!』


────時が、止まったように感じた。

否、止まって欲しかったのかもしれない。


『何をまた馬鹿なことを、』


『本気だぞっ』


『…私との、婚約は』


はっ、と霧氷様が目を見開く。

本当に何も考えていなかったのか。


…私の、ことなど。


『扇莉いいっ、私はどうすれば良いのだ!?』


どうすれば、って。


『そう、だな…』


違う。私は、まだ。


『この際、』


わざとこんな横柄な態度をとってることに、気づいてほしくて。


『婚約解消するか?』


まだ時間はあると、思っていたから。

いつか自分の想いを伝えられる、そんな時がまだ私たちには─あると思っていたから。


『や、でも、そんなことができるのか?』


狼狽える霧氷様は、いつもなら可愛らしいなどと私は思う所なのだけれど。

今はこの胸の痛みに耐えるだけで精一杯だった。

それなのに、私の口は懲りることなく話し続ける。


『まあ、一族の者も文句は言わないだろう。あの花姫様と、全てに定評のあるお前なら。恋愛結婚なら尚のこと喜ばれるだろうな』


どうして、自分からこんなこと。


『扇莉、本当に良いのか?』


『…あぁ』


『扇莉、ありがとうっ』


──あぁ。今分かった。まだ、私は。


『幸せになれ、馬鹿』


貴方の幸せを、貴方のその笑顔を見たいと思ってしまう。


だから、これからも、その先も。

貴方を愛しいと思ってしまうのでしょう。


自分を傷つけてでも、否、こうしなければ──貴方の傍に居られなくなってしまうから。


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