君に届かない。
恭が自分の本心に気付いていることに泉は気付いているが、それでも一応体裁を繕う。



「私は、友達からの伝言を伝えに……」

「へー、伝言ねえ」




(食えないやつ。言いたいことがあるならさっさと言えばいいのに。)


相手が先輩であることにさえ苛立ちを感じてくる泉は、眉間に皺が寄るのを必死に抑えていた。

そんな様子を知ってか知らずか、恭は女受けしそうな笑顔を浮かべて泉に近づく。



「和泉葵ちゃんからの伝言?冗談だろ、あの子はそんなことしない」

「よく知ってるんですね、葵のこと。彼女もターゲットですか?」



もはや不快感を取り繕う気もなく、どこか暗い笑顔を浮かべながら言葉に皮肉を混ぜる。もう猫を被ったって意味がなく、意味がない以上それをするのは無駄でしかない。




「まさか。俺は割り切れる子じゃないと遊ばないよ。君みたいなね」

「私みたいなタイプはあなたのことが大嫌いですよ。良かったですね、女に嫌われるなんて滅多に無い経験が出来て」

「あ、俺のことそんな風に思ってるんだー。でも残念、嫉妬深くて我が儘な女は俺のことが嫌いだよ」




(何コイツ、気に食わない。)

(ムカつくけど、これはきっと同族嫌悪だ。)




いつしか2人の間には火花が散っており、言いたい放題だが決して笑顔は崩さない表面的冷戦状態。

だが話が逸れれば逸れるほど、泉にとって好都合だった。
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