君に届かない。
しかし恭の方も当然それを分かっていて、道路の小石でも蹴るように泉の地雷を踏み潰しにいく。



「まあそんな嫉妬深い君だから、和泉葵ちゃんを憎んで大和と付き合わないようにした理由なんて簡単に想像できるけど」



その言葉と同時に、泉は鋭利な刃物で刺されたような顔をした。それを見ている恭はというと、罪悪感も高揚感すらもなくただただ静かな笑みを浮かべているだけである。

泉は思う。この瞬間ほど、彼のような人がモテる理由が分からなかったことは無い、と。



「……言いふらしますか?貴方が言えば影響力は計り知れないでしょうね、特に女子への」



早川真琴含め、女子は1人にでも伝わったら瞬く間に全校中に話が広がるだろう。その過程で変な尾ひれが付くとも限らない。

話題はあの日野大和についてだ。和泉葵や蒼井泉も、少し話題に敏感な人(恭もその類いである)なら他学年でも知っているそこそこの有名人だ。女子が何も思わないはずはない。



しかし恭は、警戒心剥き出しの泉に対して、いかにも可笑しそうに笑っている。完全に、誰がどう見てもふざけた態度だ。




「俺がそんなに意地悪に見えるー?」

「見えますよ」

「だったらそれは勘違いだね。別に俺は誰にも言わないよ」




その言葉の裏を読み取ることは、察しが良く疑り深い泉にとってコンマ数秒で終わる単純な作業だ。



「変わりに私は何をすれば?」




つまりは取引。泉が何か等価の物や行動、もしくは情報を渡せば黙っているということである。
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