シャッターの向こう側。
「え。ちょっと神崎ちゃん!!」

「えええ。雪ちゃん!! なんでドア閉めちゃうの!」


 開けられません、開きません、閉めちゃいます、閉め出しちゃいます!


 きゃいきゃい坂口さんと冴子さんが騒いでいるけど、無理~!!!


「今のは隆平が悪い!!」

「そうだ、宇津木が悪い」

「……何でだ」

「今のはちゃんと受けてあげなきゃ駄目じゃないの!」

「そうだぞ。デッカイシャモジを持って突撃してだな……」

「俺が? 出来ると思うか?」


 やられたらやられたらで引く。


 朝から妙なテンションですね。


 微かにドアを開けて、外を覗く。


「とりあえず、人の部屋の前で漫才はやめてくださいませんか?」

 ハッキリと言い放つと、無言で耳を引っ張られた。

「いたっ……痛いです! 宇津木さん!」

「坂口。しっかりしつけをしておけ」


 しっ……しつけ!?


「え~? それは無理だよ」


 てか、坂口さんも恋人をかばって!


「とにかく雪ちゃん。突然になったみたいだけど、キャンプに行くから用意してきてね?」


 冴子さんはニッコリと微笑みを浮かべ、宇津木さんの手を払ってくれた。


「……は、はぁ?」


 キャンプ?

 キャンプとな?

 そういえば、つい最近そんな話も出ていましたが。

 何のお知らせも無しにキャンプですか?


 坂口さんを見て眉をしかめる。

「私に用事があったらどうするんです」

「あ。何かあった?」

 目を丸くする坂口さんに、溜め息をついた。


 そりゃね…暇ですとも。

 だけどさぁ?


「15分頂けますか? 起きぬけなので」

「それじゃ女の子には短いでしょ。30分くらいイイワヨ~。その間に、貴方の彼氏に説教しておくわ」

 冴子さんの申し出に頭を下げる。

「よろしくお願いします」

「え? お願いしちゃうの?」

 坂口さんの悲壮な声をドアで遮断し、バスタオルを持つとシャワーを浴びに行く。

 余り待たせるのも悪いし、手早く髪を乾かし、化粧もパパッと済ませて荷物をまとめた。
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