シャッターの向こう側。

子供の楽園……もしくは大人の休息

******





 遊園地は昔から好きだ。

 特に女の子らしいメリーゴーランドよりも、ゆったりムーディーな観覧車やコーヒーカップよりも……


「きゃ────!!」

「……っ! ……っっ!!」


 まわりで繰り広げられる阿鼻叫喚!

 つまりは絶叫系!

 何がなんでも絶叫系が断トツに楽しいじゃない!

 このスピード!

 この落ちる瞬間の無重力感!

 普段は有り得ない風景の数々!

 地面が頭上に感じる一瞬なんて楽しいったらありゃしない!



「あ~。堪能した」

 デジカメの使用許可を無理矢理もぎ取って、頂点からの風景を確認。

「うん。なかなか迫力の絵が撮れてます」

 隣では、青い顔で膝に手をついて俯いている宇津木さん。


「……あれ。絶叫系は苦手でしたか?」

「そういう問題じゃない……」

 まぁ……なかなか良い絵が撮れないから、通算12回は乗ってるけど。


「別に付き合ってくれなくても良いんですよ?」

 無理に頼んだ訳じゃないし、なんでついて来たかも謎だけど。

「……お前が信じられん」

「信じて下さいなんて、一度も言った事ないじゃないですか」

「そういう事は言ってない」

「とりあえず、休みましょうか」

 ジェットコースターの降り口にいつまでも陣取るのは、いくらプレオープンで人気もまばらとは言え気が引けるし。

 近くのベンチに宇津木さんを座らせて、自動販売機でジュースを買う。


「どうぞ」

「…………」

 宇津木さんは無言でジュースを受け取ってうなだれた。

「平行感覚がおかしい」

「それはご愁傷様です」

 ジロリと睨まれる。

「これで良い絵が撮れてなかったら、本気で叩くぞ」


 いつも遠慮容赦なく叩くくせに……


「後でまとめて見せますから」

 ま、とりあえず、宇津木さんは動けないみたいだから、チャッチャと他を撮ってこようか……

 思って歩き出したとたん……


「うぐっ」


 服の裾を引っ張られ、首が締まった。
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