シャッターの向こう側。
「だって宇津木さん。車の免許とか無いんでしょ? 田舎は買い物が大変なんです」

 最寄りのスーパーまで徒歩20分とか、近くのバス停や駅まで出るのは1時間かかるとか……

 公共交通機構にはとんと見放される所だってあるんだから。


「……別に。歩けばいいだろ」


 その答えにキョトンとした。


「歩いた方が面白い」

 宇津木さんは肩を竦めて私の頭をグシャグシャとかき回す。

「車だと見落とすような所も歩いてれば気づくだろうが」


 はぁ……


 まぁ、そうですけどね。


「海を渡るとか……そう言うのは無理だろうが、歩いた方が面白いぞ?」

 言われて唇を尖らす。

 そりゃ、私もそう思いますけどね。

 宇津木さんが言うなんて思ってもみなかったかも知れない。


 と言うか……


「いつまで人の頭グシャグシャにしてれば気が済むんですか!!」


 パシッと手を払いのけて髪を直す。


 人の頭をなんだと思っているんだ。


「少しは身だしなみも備わっているわけなんだな」

 それはどういう意味だ!!

 じろっと睨むと、宇津木さんはニヤニヤと笑って足元から何かを拾った。


「いつも髪なんか気にしてるとこ見たことがない」


 そう言って、拾った棒きれを眼の高さまで持ち上げる。


「形振り構わず、一心不乱。結果が伴ってないのは仕方がないとして……お前はいつもそうだからな」

 ホレ……と木の棒を渡されて受け取る。

 白っぽく見えるその枝は、思いのほか軽かった。


 あの……


 それって、もしかして褒めてくれてるのかな?


「…………」


「まぁ、正直言えば。猪突猛進、他人の迷惑顧みない、日和見とも言う」

「一言多いわ!!」


 思わず手にしていた枝を投げつけると、宇津木さんは軽く右にずれてかわした。

「危ないな!」

「あんな軽いの、当たったって死にやしません!」

「そう言う問題じゃないだろうが!」

「宇津木さんだって、前に私の首絞めたじゃないですか!」

「だから! 好き好んで首を絞めた訳じゃなく、結果として絞まっただけだ!」

「本気で苦しかったんですからねっ!!」

「反射神経は鍛えられただろうが!?」

「自分を正当化するな~!!」


 しばらくそのまま言い争いになった。
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