シャッターの向こう側。
 顔を上げると、難しい顔で私を見下ろしている宇津木さん。


 わ……私、今すごいこと言わなかった?

 この人って、坂口さんの友達じゃない。


 なのに……


「あのな。ひよこ」


 ボソッとしたぶっきら棒な声に、思わず引きそうになった。

 怒った?

 怒ったの?

「そんなにビクつくな。面倒だから」

 溜め息混じりに、宇津木さんは目の前にしゃがみ込んだ。

「あいつはあいつなりに理解してるとは思うぞ?」


 えーと。


 ですよね?


「ただ、お前と同じ次元にあいつはいないから、それなりに難しいんじゃないか?」

 ……もしかして、ひどい言われようじゃない?


 次元って……


「しかも、お前はひよこと言っても、ケツに殻つけたまんまのひよこだからなぁ?」


 ニヤリと笑われて瞬きをする。


「これからもがいて独り立ちするんだろうよ」


 ボンヤリと宇津木さんの顔を眺める。


 ねぇ、今、なんか言った?


 ひと……


 独り立ち?


 独り立ちとか言ったの?


 この宇津木さんが?


 本当に?
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