シャッターの向こう側。
「…………」


 いやいやいや。

 宇津木さんの性格を考えると、普通にリップサービスとか言わないよね?

 と、するとよ?

 真面目に言ってるの?

 ねぇ、真面目に本気で言ってるの?

 そう思った瞬間に、頬がカァッと熱くなった。


「宇津木さん!」


「なんだ?」


「乙女の前でケツとか言わないで、お尻って言ってください!!」

 叫んだ瞬間、宇津木さんは無言で立ちあがった。

「誰が乙女だボケ!!」

 スコン! といい音がして、頭を叩かれる。

「痛い!!」

「当たり前だ。痛くしたんだ!」

 こんにゃろう。

 痛いっす。

 まったく涙が出るほど痛いです。


 痛いけど、ちょっぴり嬉しかった。


 断じてマゾじゃないけど。


 涙目になりながら、ちょっとだけ笑う。

 笑うと、宇津木さんもちょっとだけ、きゅっと唇の端で笑ってくれた。


 それがまた、とっても嬉しかった。















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