シャッターの向こう側。
 これも、もう懐かしい感じ。

 もう、あれから1ヶ月以上経つのか。

 なんだか目まぐるしくて、時間が経つのが早かった。

 T市のテーマパークの仕事が終わって、宇津木さんとチームを組むことが増えて、Mミュージックの仕事が舞い込んで。

 ……思えば、ほとんど組んだこともない私とやるのは、ディレクターとしては大変だったろうに。

 しかも、ちょっとばかり迷惑かけた記憶なら、少なからず多数あるかも。


 ……そう考えてみたら、宇津木さんて面倒見いいのか。

 とにかく、言動が悪いのよ、あの人は。

 ブチブチ言いながら、封筒を開ける。

 出て来たのは、取り急いで仕分けたカラー写真と白黒の写真。

 それからたくさんのネガと、分厚いもう一つの封筒。

 あの時の事を思い出しながら一枚一枚を眺める。

 こっちは、私用に撮った方だね。

 後でゆっくり見よう。

 ……で、この分厚い封筒が、宇津木さんと坂口さんにボツをくらった写真。

 ボツになったのは、正直あまり見たくないけど、見なきゃ何故ボツになったのか解らないから。


 封筒を開いて、写真を取り出す。

 一枚目から、なんだよコレ。

「あちゃ~」

 斜めに写ったホテル・ユグドラシル。

 ……これ、確か宇津木さんに引っ張られてぶれたんだよね。

 その後で、目の前を5歳くらいの男の子が風のように走り抜けて行ったっけ。

「危ないなら危ないって言えばいいのよ」

 パラパラと写真を見ながら、クスクス笑う。

 でも、これじゃ確かに使えないな。

 お客様が写っていたり、中心がズレていたり。

 中には宇津木さんが入っちゃってたり。


「…………」


 パラパラとめくりつつ、首を傾げる。

 あまり人を入れないように写していたと思うんだけど……。


 これも、こっちも……。


 振り返ったり、横顔だったりするけど。


「宇津木さんが入っちゃってるや」


 ……何を考えていたんだ、私。
< 165 / 387 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop