シャッターの向こう側。
 唐突に聞こえた電子音、


「きゃぁああ!!」


 思わず耳を塞いでしゃがみ込む。


 何?

 何の音!?

 辺りを見回しても誰かがいるわけでもなく、音は鳴り響く。


「…………?」

 あ。

 スマホだ。


 思い当って、慌ててズボンのポケットを探る。

 画面を開くと青白い光があたりを照らしだし、少しだけホッとする。


 ホッとしたついでに、画面も見ないで電話に出た。


「もしもし?」

『ああ。神崎か?』

 淡々とした低い声。

 普段はムカつく声に、今はとても安心した。


「はい。宇津木さんですか?」

『ああ。坂口から簡単なレイアウトが届いたんだが、お前も見ておくか?』

「見れるものなら」


 と言うか、帰れるのなら……


『…………』


 電話の向こうがやけに静かになった。

 それから、何かガサゴソと紙の擦れ合うような音がした。


『お前……今、どこにいる?』


 判れば苦労しません。


「分かりません」

『何か見えるか?』

「それが……何も見えません」

『暗いのか』


 その通りです。


 それから電話口で溜め息が聞こえた。


『やると思った』

「……はぁ?」

『まぁ、いい。周りにはまず何がある?』


 何って……


「木がいっぱいです」

『またややこしいところに迷い込んだなぁ』

 呆れた様な声にカチンとする。

「好きで迷い込んだ訳じゃありません!!」

『好きで迷い込んだらただの馬鹿だろうが』


 ……くそぅ。

 言い返せない。


『とにかく、目印になりそうなものは見えないか?』

「何故ですか」

『何故も何もないだろうが』

 また溜め息が聞こえた。

『……どうする? 捜索隊でも出してもらうか?』
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