シャッターの向こう側。
 そ……捜索隊?

「そんなものがあるんですか?」

『ある訳がないだろうが。おそらく南の森林に迷い込んでいるんだろうが、明かりもないとすると遊歩道でもない訳だろう?』

「遊歩道って、コンクリートですよね?」

『そうだな』


 あっさり言うんじゃない!!


 ちょっとだけ、悲しくなってきた。


「とにかく、何も見えません」

『じゃ、音は?』

「音?」

『水音は聞こえるか?』


 スマホを離して、辺りに耳を澄ませる。


 全く何も聞こえない。


「……何も聞こえません」

『じゃ。周りの木の種類は判るか?』

「そんなもの素人に判る訳が……」

 言いかけて、木の一つに何かプレートが下がっているのが見えた。


「あ。待って下さい」

 近づいて、スマホの光を頼りにプレートを見る。

 うわ。

 英語だよ……

「C……Cryptomeriaって書いてありますけど」

『ああ。なるほど』

「分かるんですか?」

『お前より学があるらしいな』


 一言余計だわ……


『とすると……お前、どっちに向かって歩いてるんだ?』

「え? どっちって……西日がまだ見えましたから、西日を右側にして北に……」


 沈黙が落ちた。


 ……ん?

 何か変なこと言った?


『ひとつ言っていいか?』

「はい」

『西日を右側にして、どうしたら北に向かえるんだ?』


 はい?


「…………」


 あ。


「左側にしなきゃいけないんですよ……ね?」


『アホ』


 うう。

 言い返せない……


『まぁいい。とにかくそっからそのまま、右を向け』

「右……ですか?」

『最低限、遊歩道に出れる。遊歩道に出れば、ホテルに向かうシャトルバスがあるから』


 どれだけ広いんだ……


『神崎。返事は?』

「……はい」

 そんなナビの元、やっと見つけたシャトルバスに無事に乗りホテルに帰りついた。


 そして………

 仁王立ちで待っていた宇津木さんに、丸めた雑誌で思い切り叩かれた。















< 18 / 387 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop