シャッターの向こう側。
「す、すすすみませ……っ」

「いや? 気にするな」

 ポンポンと頭を叩かれて、フッと笑われた。

「あそこまで病院が嫌いだとは思わなかったけどな」

 ちゃきちゃき体温計を出されて、ほいっと手渡される。

「ありがとうございま……」

「とりあえず様子見してたら暴れるし、イキナリ手を掴んで離さないし、かと思えば寝てるし……何なんだ?」

 いえ。

 全然、わかりませんから。


 って言うか……さ。


「私が、手を掴んだ?」

「ガシッとな?」

 ひ、ひぇぇええ!

「離さないし、つねっても起きないし、叩こうと思ったらそこの二人に止められた」

 や。 普通はそうでしょうとも。

「病人叩こうと思うのは、きっと宇津木さんくらいでしょうねぇ」

「……弱ってる女の部屋に男が泊まるよりは無難だろうよ」

「……佐和子たちがいるし」

「加倉井さんが騒がなきゃ、有野さんはお持ち帰りしてたと思うぞ?」


 有野さんて……

「面白いですねぇ」

「お前も少しは自覚しろ」

 何をですか。

 キョトンとすると、宇津木さんは視線を逸らせる。

「……まぁ、いろいろと」

「自分は男で、神崎さんは女の子だから、と、なんでそこで言えない訳?」

 唐突に聞こえてきた低い声に、慌てて足元を見ると、有野さんが呆れた顔で頬杖をついていた。

「宇津木って、救いがたいねぇ」

「何がです」

「それこそいろいろと? 面白いよ、君達眺めてると」

「俺は面白くないですが」

 私も面白くないですよ。

「加倉井はこんな状況でも、気持ち良さそうに寝てるね」

 話についていけませんが。

 ウキウキと、どんな起こし方にするか思案してる有野さんは無視する事に決めて、体温計をわきに挟む。


 昨日よりだいぶ気分はいいから、平気だと思うんだけどな。

 案の定、熱は平熱。

 有野さんに引っ張られて騒いでいる佐和子もこの際無視して、にこやかに手を振って送り出す。

 なんなんだかは、あの二人だな。
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