シャッターの向こう側。

金曜日……もしくは秋

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 今週は大変だった。

 というか、あの原始林で遭難したのが。

 日の出と共に歩き始め、やっと遊歩道を探しだし、車に戻ったのが5時半過ぎ。

 そこから車に乗って宇津木さんを先に送り届け。


 ……結構、いいマンションだった。

 それから私は私で車を返して、自分のマンションに戻ったのが8時近く。

 もう眠るのも無理で、シャワーを浴びて出勤したけど遅刻ギリギリ。

 レンタカーの延滞料金は、宇津木さんのポケットマネーから出た。

 後はかろうじて撮った写真を現像したり選んだり。

 後は雑誌の広告の写真撮りやらなんやらかんやら……


「今週はなんだかボロボロね」

 加納先輩の声に振り返った。

「ちょっと疲れました」

「ま。週末だからゆっくり休みなさいよ」

 そうしよう……

 今日は残業も無しに出来そうだし。

 パソコンのデータを保存して、溜め息をついた。

「終わり~! 後はグラフィックスにお任せします!」

 データを入れたフラッシュメモリを勢いよく宇津木さんに差し出したら、微かに肩を竦められた。

「……お前は、どこまでいじったんだ?」

「いじったのとネガのままのと、両方を保存してありますから。お好きな方を使って下さい」

 宇津木さんは小さく苦笑してから、メモリを受け取って軽く頷く。

「助かる」

「はいはい。ではお先に」

「ああ。お疲れ」


 リーダーに社員カードを通していると、後ろから加納先輩につつかれた。

「……何だか妙に仲がいいわね?」

 はぁ?

「宇津木くんと神崎ちゃん。普通だったわよ?」

 ……普通ならいいと思うんですが。

「漫才みたいだったのに、普通な感じ」

「漫才みたいな方が何か嫌ですが」

「言いたいこと言える相手ってのはいいわよね」

 歩きながら笑う加納先輩に首を傾げる。

「そうですね。あまり遠慮された事はないですね」

「神崎ちゃんも、とても遠慮しないと思うんだけど」

「宇津木さん相手に遠慮してたら、爆発しちゃいますよ。ただでさえポカポカ叩かれるのに」

「あら。宇津木くんも大分丸くなったと思うんだけど」
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