シャッターの向こう側。

空港にて……もしくは噴水の煌めき

******





「♪♪♪」


 今日も元気にいい天気だぞ☆

 ノリはオッケーィ!!

 軽やかに鼻歌を歌いながら、やけくそのスキップで、荷物を綺麗なアテンションプリーズなお姉様に預ける。


 ……たぶん、頭は半壊中。


 ほら見えもしないのに、お空に優しい室長の笑顔がキラキラと……!


 バシンといきなり襲ってきた衝撃に舌を噛みそうになった。


 いや、今は目の前に星が飛んだね。


 涙目になりながら、脳天突き刺すような痛みをくれたであろう人を振り返る。

 会社にいる時より何故かカッチリとしたジャケットにジーパンの宇津木さん。
 腕を組みながら無言の圧力をかましてくる。

 サングラスなんてしてるから、余計に恐い。


 けど負けないわ!


「…………っ!!」


「…………」


「……申し訳ありません」


 人間、素直になるって素敵だ。


「なんでド○ド○なんて歌ってるんだ」

「いや。心境的に、仔牛が売られて行く気分になりまして……」

「気持ち悪いからやめろ」

「了解しました!」

 敬礼して背筋を伸ばす私に、宇津木さんはますます眉をしかめた。


 でも、何も言わないから許容範囲だったのかもしれない。


「遊びに行くわけじゃないんだからな。曲がりなりにも俺とコンビなんだから、足を引っ張るな」

「はぁ~い」

 テキパキと歩き始めた宇津木さんに、トホトホとついていく。


 こう見えて、宇津木さんは有名な賞とかも獲得してるグラフィックデザイナーで、今回はアートディレクターも兼ねる。

 つまり、今回の広告のデザイナーであり監督。

 なんでフリーじゃなくて、この会社にいるのか謎だけど、仕事はキッチリしてるしなかなか信頼も厚い。

 BY 佐和子の情報メモ。



 ……こんな情報はいらん。


 せっかく親友の佐和子が、宇津木 隆平の情報をくれたけど……。


「早く来い。ひよっこ」


 思わずメモをに丸めた。


 こう見えて、私は一年この人の隣の席をやってるんだから、情報には事欠かないわよ!
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