シャッターの向こう側。
 ど、どどどどうすれば……っ?


 いや、まずは落ち着け。

 落ち着くんだ私!

 相手は寝てる人。

 不可抗力だ、不可抗力。


 そっと押しやってみようか?


 でも……起きちゃったら可哀相かもしれない。


「…………」


 にしても、こんな宇津木さんて初めて見るかも。


 徹夜して働いてる宇津木さんはしょっちゅう見てたけど、流石に会社で居眠りしてる姿なんか見ないし。


 疲れてるのかな?


 疲れてるよね。


 なんて言っても、あっちからそっちって感じに強行軍でとんぼ返りだもんね。

 それでなくても、慣れない雪に体力も使っただろうし……


 悪いなぁ……

 なんて思いつつも、何か嬉しいかも。

 宇津木さんにとっては〝責任〟って二文字かもしれないけど、私からしたら〝迎えに来てくれた〟訳で……

 確かにどんな顔で会えばいいのか、考えないでもなかったけど……


 当たり前な話、宇津木さんはいつもと変わらなくて。


 変わらない事が……


 嬉しいけれど、寂しくもある。


 いつもと変わりなく、何の変哲もない。


 それはそうだよね。

 それを望んでる訳なんだから。


 変わってしまうのが嫌。

 だけれど、変わらないのも嫌。

 全然、相反する……


 ……どうすればいいんだろう?


 昔は、どうしたんだろう?


 好きな人には、他に好きな人がいて。


 どうやって諦めたんだろう。

 どうすれば諦められるんだろう?

 時が経てば、この気持ちも忘れられるかな……?


 離れようとするのに、離れられない。

 忘れようとすれば、それだけ考えてしまう。


 この気持ちが、いつか無くなる日はくるのかな……

 こういうのを苦しいって言うのかな。

 ……苦しいのに、こうして会えば嬉しくて。

 こうして会えば、変わらないのが苦しくて。

 会えないのも苦しいし会うのも苦しい。


 私……



 どうすればいいんだろう?
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