シャッターの向こう側。
「し、仕事中!」


 仕事中だし!


 仕事しに来てるんだしね!


 ねっ!?


「そうだな」

「だから手を離して、手を!」

「勝手にうろつかないって約束できるか?」

「仕事中はしないっ!」


 言い切ったら、眉をしかめられた。


「それは……」


 ん?


「約束をしないと言う意味か?」

「へ?」

「それとも、私生活ではフラフラすると言う決意か?」



 はぁ!?



「な、なに言ってるの! 宇津木さん訳わからないですからっ!」

「たまにはそういう事もしたほうがいいらしい」

「そういう事って何っ」

「甘い雰囲気とか、そういうの」


 いや。

 困るからっ!

 とんでもなく困るからねっ!


「何を真面目な顔で言ってるんですかっ!」

「何がだ」

「だから……その、色々と!」

「何か問題あるか?」

「仕事ですからっ!」




 叫んだ途端に、



 ゴツンと、やたら固い何かに頭をぶつけた。



「………っ!?」


 そこは見慣れた宇津木さんの部屋で……

 テーブルに頭が乗っている。

 視線を上げると、今や定位置になりつつあるパソコンデスクの前に、冷たい視線を返してくる宇津木さんがいたりして……


「あれ?」

 何が起こってるの?


「……お前な」


「は、はい」


「俺が真面目な顔して仕事してたら、何か問題でもあるのか?」


 無言でお互いに見つめ合う。


「……お前」

「は、はひ」

「今、寝てただろう」


 ゆ、夢?


 今の……

 夢?


 なんか、やたらに現実的な夢だったよね。

 でも、宇津木さんって仕事中は鬼だし。

 絶対にあんな事にもなるはずもなく……



 願望っ!?

 あれって私の願望なのっ!?


「何を頭を抱えてる」

「う、ううん。別に」

「寝ていてもいいが、邪魔はするなよ?」


 ほら。

 邪険にするし。
< 378 / 387 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop