シャッターの向こう側。
「うん。まぁ……俺は車を運転するから、車道じゃなくて歩道を走っていてもらいたいけど、自転車の事故で下半身不随になった人がいるからね」

「……自転車の事故でも、警察を呼ぶ事故になりますからねぇ」

 しみじみ語り合っていたら宇津木さんが近づいて来て、ローテーブルの上にジュースの缶を置いた。

「事故は事故だからな。あまりに身近過ぎるモノだから、見落としがちだが……案外いい案かもしれないぞ?」

「え? 何がですか?」

 宇津木さんは腕を組み、私と坂口さんを見比べる。

「貸し出し自転車とか?」

「あ。レンタルサイクルですか?」

 手を打つと、宇津木さんは軽く頷いた。

「先方次第だがな。ただ、これだけ緑豊かに作ってる割に、移動手段がシャトルバスだけってのも味気ないよな」

 そう言って、宇津木さんは写真の一枚を差し出す。

「これなんかは、停留所と停留所の間にあるオブジェだろう?」

 私が勝手に命名した〝恋人達の公園〟

 チューリップに囲まれたベンチ、その後ろにあるハート型のオブジェを撮った写真だった。

 今日は天気がいいから、撮れると思ったんだよね。

「お前も、よく気がついたな」

 ニヤリと笑われ、少し眉をしかめる。

「何故、そんな警戒した様な顔をする」

 ……だって、何だか企んでるような笑顔だし。

 それこそ、障らぬ宇津木に祟りなし……

「……たまに、お前って足蹴にしたくなるよな?」

 き、聞かれたって困るけど!?


「まぁまぁ、そうかもしれないけど。お前って企画の方にも携わってる訳?」

 坂口さんが間に入ってくれはしたけれど……今さらっと、怖いこと言わなかった?

「あくまでも、俺は広告代理店の人間だから……ただ、ここの企画に高校の後輩がいた」

「あ~。成る程ね。そういう事」


 何が成る程なのか、全然解らない。


 前々から、ふっと思ってたけど……


「……仲が良いんですね」

 ポツリと呟くと、二人は私を凝視した。


 え。

 何かおかしな事を言った?


「そりゃ……」

 と、坂口さんは苦笑し、宇津木さんは小さく溜め息をついている。

「あのな、ピヨ」
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