シャッターの向こう側。

挑戦状……もしくはきっかけ

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 T市初、大型アミューズメントと銘打ったテーマパーク・ユグドラシル。

 ……というより、リゾートホテルに近いんじゃなかろうか?

 中央部にはジェットコースターや観覧車などの乗り物が見え、その南側にはこんもりとした木々と、遠くにはもともとあった湖の煌めきが見える。

 南側は遊歩道があって、パークゴルフや植物観察なども出来るらしい。

 それから東側にはレストランやお土産屋さんの建物……と聞いたが、何故か建物は北欧風。

 そこに立つと、微かな異国情緒が楽しめるかもしれない。

 ……で、西側には、大きなドーム型のガラスハウス。

 プールがあるって計画書にあったから、きっとあれがそうなんだろう。

 それから、北側にこの温泉つきの……


「………っ!!」


 足を踏まれて隣を見ると、表情もなく担当の方と話し合いをしている宇津木さん。

 パラッと、書類をめくったついでに睨まれた。


 ……この男はっ!!


「どうかしましたか?」

 何も知らない、相手の担当さんが、ニコニコ顔で首を傾げる。

「あ。いえ。なんでもないですので、どうぞどうぞ」

 私に手渡された書類を持ち上げ、目を通すふりをする。


 ちょっとくらい、被写体を眺めていたからって何よ。

 私はこの施設を撮る訳でしょ?

 なら、場所くらい把握しておかないと。


 ……まぁ、実は後でしても、全く問題ないんだけどね。


 だからって、足を踏むことないじゃないのさ!


「まずは、この北地区のホテルを中心に、レストランと商業施設、遊園地などでしょうか?」

 宇津木さんは、淡々と話を進めているし……。


 睨むだけ、無駄だわね。


 てか、そんな話、普通は依頼を受けた段階で営業がする仕事じゃないのかしら。

 まず、営業が相手企業さんの意向を聞いて、デザイナーやフォトグラファーが動く訳なんだけど。


 だいたい、私にこんな大きな仕事が来るとは思ってもみなかったから、先輩たちが浮かれ気分で騒いでいたのを眺めてただけで、たいした話も聞いてなかったし。


 ふと、思って愕然とした。
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