くるまのなかで
「娘も二人いるけど。上の子はもう中学生」
「うっそ! そんな大きいの!?」
3人の美女って、奥さんと娘ふたりってことか。
「俺が24の時の子だからなぁ。つーか驚き過ぎ」
そりゃあ驚きもしますって。
38にもなってチャラチャラしてるし、色気付いてるし、見た目だけはキレイだし。
仕事だって家庭があるとは思えないような働き方をしている。
まあそれも、明日からの休みをしっかり謳歌するためなのだろうけれど。
「こんなチャラ男に妻子がいるとか思わないじゃないですか」
「失礼極まりないな」
「指輪もしてないし」
「指輪なら家に置いてあるよ。ずっとつけてるとかぶれるんだよ。ナイーブなの、俺」
「ナイーブって……」
ますます指輪をしていないというだけで結婚していないと判断してしまった自分が虚しくなる。
「うちは子供も女ばっかだし、二人ともすでに思春期入ってるから、ちょっと老けただけで“パパキモーい”とか言われんの。イケメンパパをキープするのも大変なんだよ」
「その苦労をわかってあげられなくてすみませんね。私には父親がいないものですから」
「あーそうだったな。寂しいなら俺がパパになってやろうか」
「毎日パパキモーいって言ってやる」
「お前に言われたって何ともないけどな」