恋が都合よく落ちてるわけない
「千鶴、この件に関わるのはよせ」
仁志さんが、腰に手を当てて、譲らない姿勢で宣言する。


「はい」
私だって、さすがにナイフで脅かされたのはこたえたし、奥田さんには二度と会いたくない。


「はあ?」
仁志さんは、本当に驚いていた。


素直なのは好きじゃないってこと?

「はあ?って何よ」


「びっくりした。素直に言うこと聞くわけないと思ってたから」


「じゃあ、ちゃんと聞いたから。
もういい?」

みんなのところに帰ろう。

私が何をプレゼントされたのか、興味津々だろうから。


腕をつかまれて、前のめりになる。
「まて、俺に渡すものがあるだろ?」


「プレゼント?あら?
誕生日だったかしら?
どんなプレゼントが欲しいの」

私は、仁志さんに嫌みを言いたかったのではない。本当に。

イラついたのではなく、不機嫌なのは恐怖からだ。

恥ずかしいことに、私は、ブルブルと全身で震えていた。


「わかった…それは、また今度で」

仁志さん、引いてる…
ひどいこと言って、
ごめんなさいって謝らなきゃ。


私は、紙袋を渡した。


「えっ?」


「渡せって言ったでしょ、どうぞ」


「中身を見ていいのか?」


「どうぞ」

ひっぱたかれたり、
投げつけられたりしてひどい扱いしたけど、いらないわけじゃない。

「何だよ…」


「言っとくけど、見せろって言ったの、そっちだからね」


「千鶴?」


「何?」


「これ、やっぱり、預かっておく」


「どうぞ。お好きなように」
< 133 / 196 >

この作品をシェア

pagetop